
宇津出雅巳(うつでまさみ)さんの「仕事のミスが絶対になくなる頭の使い方」という本を読みました。

この本で一番学びになったのは「ワーキングメモリ」の話。
何となく知っていたつもりになっていたのですが、宇津出さんの分かりやすい説明で、理解がぐんと深まりました。
ワーキングメモリは「脳のメモ帳」とも呼ばれ、一時的に情報を蓄えるコンピューターのRAMにあたる部分。特徴は2つあって、一つはワーキングメモリの容量はとても小さいということ、もう一つはトレーニングによって容量を増やすことは難しいということです。
そのため、ミスを減らすためには、全てを覚えようとするのではなく、このワーキングメモリに負荷をかけないようにすることが基本戦略とのこと。
ワーキングメモリは短期的に記憶を保存するだけではなく作業台でもあるので、おぼえておかないといけない量が増えるほど作業台が狭くなり(=注意力を消費し)、複雑な情報を処理できません。
その点、メモに書き残せば、即座にワーキングメモリを解放できますので、仕事の精度やスピードも上がるのです。
「仕事のミスが絶対になくなる頭の使い方」より
うーん、これ経験的に何となく分かっていますけど、このように概念が分かるとより応用が効くようになりますよね。
そして、物事に習熟してくると、このワーキングメモリを使う必要がなくなるという説明も納得できるものでした。
仕事でも、ある仕事の経験を積めば積むほど、そこに全身全霊を傾けなくても正確、かつ迅速に仕事がこなせるようになります。必要な「腕」の本数が減るのです。よって、仕事でアテンションミスを減らしたいなら、さっさと仕事に慣れてしまうことです。
すべての仕事とは言いません。いわゆる雑用のような単純な作業であれば何度も繰り返していればルーチン化するでしょう。そうやって注意力を消費しない仕事が増えれば、ほかの重要な仕事に割くアテンションが増えるというわけです。
「仕事のミスが絶対になくなる頭の使い方」より
私も研修講師をはじめたばかりの頃は、伝えなくてはならないポイントを覚えるためにこのワーキングメモリを消費してしまい、受講者の反応まで中々キャッチできなかったように思います。今はほとんど無意識で話せるようになったため、場の状態が良く見えるようになってきましたし、受講者とのやりとりに集中しやすくなってきました。
そして、このことは医療における新人教育においても大事だと思います。
研修医や新人看護師は、処置の手順に習熟しておらず、直前に泥縄的に手順を頭に叩き込んで処置に臨むことが少なくありません(もちろん危険がないように指導医が見ていますが)。そうすると、手順をこなすことだけでメモリが食われ、肝心なものを見落とすことが多いのではないかと思います。
つまり、処置の手順などはワーキングメモリに頼らないですむように、早めに徹底的に覚えろということですね(笑)
また、指導する側も、ミスの多い研修医や新人看護師に対しては「ワーキングメモリがいっぱいなのではないか?」という視点を持つと指導のポイントも変わってくるかもしれません。
とりあえず、今年11月に予定している横浜市大(母校)の研修医向け講演では、「とにかくメモを取れ」「基本的な手技は早くモノにせよ」と後輩たちに力説してこようと思いました。
守屋文貴
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