“出来る人”と“出来ない人”の「差」を広げないための新人育成のコツ | 医療特化型の研修・組織開発ならアクリート・ワークス

“出来る人”と“出来ない人”の「差」を広げないための新人育成のコツ

 

研修医や新人看護師を見ていると、“出来る人”と“出来ない人”の「差」がどんどん広がっていくことがあります。これは、新人育成の目的を考えるとあまり望ましいことではないように思います。

 

 

今日は、その原因と対策のポイントを「強者はますます強く」というモデルを使って整理していきたいと思います。

 

 

 

「強者はますます強く」

 

 

「強者はますます強く」を一言で表現すると、「小さな差が大きく広がっていく」こと。

 

 

「複数のプレーヤーが、限りある資源をめぐって争う関係にあるとき、一方が成果を挙げると、そちらにより多く資源が配分されるようになり、さらなる成果が産まれるということが繰り返されて、強者と弱者の差が拡大していく」という構造のことです。

 

 

強者はますます

 

 

例えば、以下のようなものです。

 

 


 

・「医師の偏在」

 

 

人気のある診療科では、医師も当直などのハードな仕事も分担することが可能になる。それによって産まれた余力をさらに組織の魅力を高めるための活動に投資することで、さらに人が集まるようになる。一方人気のない診療科には、医師も集まりにくく、現場には疲労やストレスが蓄積していき、ますますその魅力が下がり、人が集まりにくくなっていく。

 

 

・「金持ち研究室と貧乏研究室」

 

 

ある研究機関において研究費という限られた資源に対して、A研究室とB研究室がその獲得を争う関係性になる。ある年、A研究室がB研究室よりも高い業績を挙げたために、翌年からはA研究室により多くの予算が当てられるようになった。その結果、A研究室はさらなる業績を上げることが可能になり、ますますB研究室との差は拡大していった。

 

 

・「男性管理職ばかりの職場」

 

 

・男性管理職が多い職場では、男性にとって都合が良い組織風土や制度が醸成されやすく、女性管理職が働きづらくなっていった。すると、さらに男性の管理職が増えていき、いつのまにか女性管理職はほとんどいなくなっていた。

 

 


 

 

上記の例のように、「医師数」、「研究費」、「管理職のポスト」といった「限られた資源」をめぐって複数のプレーヤーが獲得を争っているような状況下では、この構造が働きやすいのです。

 

 

新人育成においても、忙しい医療現場において、「教育に充てることが出来る時間」「新人に任せられる手技や判断」「限られた資源」です。それに対して、各プレーヤーは(潜在的にかもしれませんが)競争関係にあるのです。

 

 

つまり、評価が高い新人は、上司や先輩から教えてもらったり、手技や判断を任される機会が多くなります。そうすると、さらに能力が上がるため、ますます周囲からの評価や信頼が高まり、ますます教育機会や難易度の高い課題を獲得しやすくなります。

 

 

一方、評価が低い新人は、上司や先輩から教えてもらう機会も少なく、手技や判断を任される機会も少なくなります。能力が上がらないため、周囲からの評価も低くなり、ますます成長のための機会を獲得しにくくなります。

 

 

トランジション

 

 

さらに、この構造のやっかいな点は、「強者と弱者の差が、時間とともに拡大していく」ことです。

 

 

「出来る」と評価された研修医が好循環に入りどんどん伸びていくのに対して、「出来ない」と烙印を押されたプレーヤーは悪循環に陥り、退場を余儀なくされることもよくあります。

 

 

「強者はますます強く」という構造下では、何らかの「調整する仕組み」が導入されない限り、このように差が開いていくのは自然の摂理なのです。

 

 

では、このような「差」の広がりを防ぐために、育成する側として具体的にどのようなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。

 

 

 

「差」の広がりを防ぐための育成のポイント

 

 

「強者はますます強く」に対する打ち手には大きく、①「弱者へのサポートを増やすこと」②「機会の平等を確保すること」の2つがあります。

 

 

①「弱者へのサポート」を増やすこと

 

 

医療現場の新人を見ていると、評価される人には「共通点」があります。それは、自分で仕事を習得していくための「方法論」を持っていることです。

 

 

新人看護師を見ていても、“出来る”とされる人は自分で「PDSサイクル(Plan-Do-Seeサイクル、計画を立て、実践して、ふり返る)」を回しています。

 

 

例えば、一日のスタート時に「今日は物品の配置を覚えよう」などと具体的な計画を立て(Plan)、それを実践してみて(Do)、ふりかえってみて分からない点は先輩に質問してクリアにする(See)、そして次の目標を立てるといったことをリズムよくやっています。

 

 

逆に、“出来ない”とされる人は、そのサイクルがうまく回っていません。具体的な目標を立てずに、言われたことをただこなしているために、ふりかえりをしようとしても的が絞れず質問や疑問が出てこないのです。

 

 

新人育成に定評がある私の友人の看護師は、「交換ノート」を使ってこのPDSサイクルを新人が一人で回せるようになるまで徹底的に付き合っていると言っていました。「メモの取り方」から一緒に考えていくそうです。

 

 

余談ですが、その友人は「看護師の世界では、何度も同じこと質問する奴は嫌われるのよ。メモを取る力をつけることは、看護師の世界を生き残る術を身に着けることと同義。」と言い切っていて、思わず笑ってしまいました。

 

 

「魚」(知識やスキル)を与えることではなく、「魚の獲り方」(知識やスキルの習得のしかた)を身に着けるように手伝うことが、「弱者」のパワーを強めることになると思います。

 

 

②機会の平等を確保すること

 

 

これは、出来る新人に対しても、出来ない新人に対しても、同じ課題を与えるということではありません。

 

 

新人育成を「階段」に例えるならば、その新人の実力にあった難易度の「階段」を用意してあげることが「機会の平等を確保する」ということではないかと思います。

 

 

「ヨコミネ式」で有名な幼稚園経営者の横峯吉文さんがインタビューの中で、「出来ない子なんていないんです。時間のかかる子がいるだけです。だから時間をかければいいんです。」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

 

 

「この時期であれば、このくらい出来て当たり前だ」という「無意識の前提」が、「強者はますます強く」の構造を産み出しているのではないかと感じることがあります。

 

 

やはり、人はその人のペースでしか育たないし、それが結局近道なんだと思う今日この頃です。

 

 

 

最後に

 

 

自分自身のことをふりかえると、ダメ研修医だったことは自信を持って言い切ることができます(笑)。しかし、脱落しそうになっても、最後まで踏みとどまって研修を終えることができたのは、何人かの先生が自分のことを評価してくれたり、気にかけて声をかけてくれたからだと思います。

 

 

「出来る人」だけではなく、「出来ない人」のことも、「誰か」が気にかけ見守り声をかけること、それもこのループに歯止めをかけるために大事なことかなと思います。

 

 

守屋文貴

 

 

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    医師、株式会社アクリート・ワークス代表パートナー
    医療機関を対象としたマネジメントスキル研修を実施している。

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