医療現場の人材マネジメントを「マスゲーム」から「キャッツ」へ | 医療特化型の研修・組織開発ならアクリート・ワークス

医療現場の人材マネジメントを「マスゲーム」から「キャッツ」へ

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今日は、医療現場において、「タレント(才能)をどのように発掘していくか?」というテーマについて考えていきたいと思います。

 

 

先日、友人の看護師と話をする機会がありました。

 

 

優秀で勉強熱心な彼は、看護教育学の分野で修士を取った後、自治体病院に就職しました。「教育担当としての仕事をしていきたい」と燃えていたそうです。

 

 

期待とは異なり配属されたのは内科病棟でしたが、「最初から望むポジションにつけるわけではない」と自分に言い聞かせて、頑張ってきたと。

 

 

ところが、それから5年もの月日が過ぎても、病院は彼の異動について真剣に検討してくれる様子もなく、「少しがっかりしているんだよ」と話していました。

 

 

私は、「彼が持つ『専門知識』や『情熱』といったリソースを活用出来ないのは、彼にとっても、組織にとっても、もったいないことだなー。」と思って話を聴いていました。

 

 

組織やチームにおける「人の捉え方」には大きく2つあります。

 

 

一つは、人を「マスゲーム」的な世界観で捉えようとするもの、もう一つは、人を「キャッツ」的な世界観で捉えるようとするものです。

 

 

「マスゲーム」とは、「集団演技」のことで、大人数で体操やダンスなどを同時に行うものです。「マスゲーム」においてフォーカスが当たっているのは、「全体」としての美しさであり、「個」の表現力ではありません。

 

 

「マスゲーム」的な世界観が支配している組織において良く使われる言葉は、「頭数が足りない」という言葉です。極端な言い方をすれば、人間を「駒」として見る傾向があります。医療においても、例えば「看護の配置基準」などといった言葉の裏側には、このような世界観の存在を垣間見ることができます。

 

 

一点補足すると、「マスゲーム」的な人材マネジメントにもメリットがあります。パワーによるコントロールが容易ですし、「パーツ」を交換するように、誰かが急に辞めたとしても代わりを探すこともそれほど困難ではありません。「安定性」や「再現性」という意味で優れています。また、組織が大規模になるほど、マスゲーム的な世界観が優勢になるのは、理由があるのです。

 

 

一方、「キャッツ」というミュージカルがあります。劇団四季バージョンには、全部で24匹の猫が出てきますが、それぞれの猫が強いキャラクターを持っています。そして、その個性を存分に引き出しながら、舞台が創られています。私が「キャッツ」を見て印象に残っているのは、ストーリーよりもむしろ、一匹一匹の猫が放つ「個の魅力」でした。

 

 

このように、「一人ひとりが持つ才能や個性に着目し、それを引き出していく」ことも「タレントマネジメント」と呼ばれる人材活用の一つの考え方です。

 

 

では、医療現場においてはどうでしょうか。

 

 

研修で様々なワークに取り組んでもらうと、参加者の「タレント(才能)」が顔を覗かせる瞬間がたくさんあります。例えば、ある病院で出会った若い理学療法士の男性は、高いレベルの思考力とファシリテーションの才能を持っていました。しかし、「チームでそのような能力を発揮する機会がありますか?」と質問したところ、「ほとんどありません」と答えました。

 

 

 

医療従事者はその専門分野においては力を伸ばしていく環境はありますが、もっと広い視野で人間の能力を捉えれば、様々な「タレント(才能)」が眠っています。世の中の流れを読む力のある人、発想力がある人、実行力がある人、分析能力がある人、説得力のあるプレゼンテーションが出来る人、教えるのが上手い人…など。

 

 

そして、それらすべてが病院に新たな可能性をもたらす「リソース」なのですが、看護師の友人や理学療法士の男性のように「宝の持ち腐れ」になっていることも少なくありません。やはり、病院が大規模であればあるほど、歴史が古ければ古いほど、公的な色合いが濃ければ濃いほど、「マスゲーム」的な世界観が支配的になりがちです。

 

 

では、どうすれば「キャッツ」のように、その人の持ち味にスポットライトを当て、「タレント(才能)」を引き出していけるのか?

 

 

一つの鍵は、「多様な刺激を組織の中に埋め込んでいくこと」だと思います。

 

 

ある調剤薬局で、「学生実習プログラムの質を向上する」というプロジェクトをファシリテートしたことがあります。そのプロジェクトに抜擢された、まだ若い薬剤師の女性がリーダーシップを発揮してチームを引っ張っていくのを目の当たりにして「才能が花開く」というのはこういう瞬間なんだな、と感動したのを覚えています。

 

 

以前、脳科学者の池谷祐二さんが、著書の中で「脳は頭蓋骨に閉じ込められているから、外のことは分からない。何もしないと、暗い映画館の中に閉じ込めておくようなもの。何かを見たり、聞いたり、外部から刺激を与えることではじめて活性化していくのだ」というようなことを書いていました。

 

 

医療現場に眠った「タレント(才能)」も、ルーチーン仕事ばかりで新たな刺激が少なければ気付くことが出来ません。様々な角度から光を当てることで、才能は見出しやすくなります。自分の秘めた力に気付くことができるような機会が、キャリアを積んでいく道程の中に埋め込まれていることが理想ではないでしょうか。

 

 

そして、何より、リーダー層が自らの世界観を変えていくこと。はじめの一歩として「人の可能性を引き出していくにはどうすればいいか?」という「問い」を持つことが重要なのではないかと思います。

 

 

そのような医療機関のあり方は、優秀な人材を引き付けていくはずです。

 

 

守屋文貴

 

 

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    医師、株式会社アクリート・ワークス代表パートナー
    医療機関を対象としたマネジメントスキル研修を実施している。

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