
組織づくりのキーパーソンは管理職です。
管理職が周囲へ与えるインパクトの中でも最も重要なものは、組織理念や価値観の「発信源」としての役割だと思います。
新人はその組織に適応するための「ふるまい」を管理職から学んでいきます。特に「管理職が『組織の理念をどのように扱うか』が、部下の理念への共感や実際の行動に大きな影響を与える」ということは先行研究からも明らかにされています。
上司への理念に対する姿勢は、「共感」次元及び「行動反映」次元に影響を及ぼしている。経営理念の浸透において上司が重大な影響を与え得ることは、これまでにも指摘されてきたが(たとえば、金井、1997)、そうした上司の影響力が改めて確認されたことになる。
(中略)
また、上司への理念への姿勢が部下の情緒的なコミットメントに影響することも、ここで確認される重要な点である。これは、上司が経営理念をないがしろにすれば、部下の情緒的な組織コミットメントを下げてしまうことを示唆している。
高巖(2010) 「経営理念はパフォーマンスに影響を及ぼすか‐経営理念の浸透に関する調査結果をもとに」 麗澤経済研究18(1), p.63より引用
私の経験に照らしてみても、廊下に落ちているゴミを自主的に拾うような管理職のもとでは、やはりゴミを自主的に拾うような部下が育っていくように思います。クライアントに誠実に向き合う管理職のもとでは、やはり、クライアントに誠実に向き合う部下が育っていきます。
「組織がそのありたい姿を体現できるかどうか」は、管理職がその“鍵”を握っているのです。
「学習する組織」の著者、MITのピーター・センゲは、同書の中で「トリム・タブ」の話を紹介しています。
トリム・タブは、船の「舵についた小さな舵」で、舵全体のほんの一部分の大きさしかない。その機能は、舵の方向を変えやすくし、それによって船の方向を変えやすくすることである。船が大きければ大きいほど、舵の周りを流れる大量の水によって舵の方向を変えにくくなることがあるため、トリム・タブがより重要になる。
「学習する組織 システム思考で未来を想像する」ピーター・M・センゲ(著)、小田理一郎 中小路佳代子(訳) 英治出版(2011)p.118より引用
つまり、巨大タンカーのような大きな船は、大きなエネルギーを使って方向転換しているのではなく、「トリム・タブ」に小さなエネルギーを加えることで方向転換しています。
まさに、この「トリム・タブ」にあたるのが、管理職なのです。
誰を「管理職」にするか?
これが、まず最初に問うべきことです。
しかし、あまり医療機関では熟慮されていない印象があります。
そして次に問うべきことは以下の2つです。
「どうすれば、管理職に理念への共感を高めてもらえるだろうか?」
「どうすれば、理念や価値観を意識した行動を取ってもらえるだろうか」
これらの問いに向き合うことが、組織理念を「絵に描いた餅」にしないために重要だと思います。
守屋文貴
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守屋文貴
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