今日は主に医療機関で効果的な新人研修を実施するための「講師選定」のポイントについて書いていきたいと思います(来年の参考に・・・)。
学習の「谷」に「橋」をかける
数年前、ある地方の病院の新人研修に同席したときに地元の金融機関の方の講演を聴いたことがあります。内容は“ごもっとも”だったのですが、一般論や銀行での事例が多く、新人の大半が眠気と必死に戦っていました。「もったいないなー」と思ったのを覚えています。
その講演が「もったいない」と思った理由の一つは、学習の「谷」で学習者がつまづいていたからです。「谷」を渡るためには「橋」が必要です。

ここでいう学習の「谷」とは、「一般論」を学ぶことと、「それを業務で活用すること」の間のギャップのことを言っています。「橋」をかけるとは、「その一般論を、実際の業務にどうあてはめて活用していけばよいのか?」というところまでイメージできるようにすることです。
新人研修においても、「ホウレンソウが重要である」という一般論を伝えるだけでは、現場をまだ経験していない新人はなかなか活用可能な知恵に変換できませんし、学ぶ意欲も下がっていきます。
例えば・・・
「医師から指示されると『ちょっとヘンだな』と思ってもそのまま実行してしまうことがよく起こりがちなんだけど、その『違和感』を感じたときこそがホウレンソウが求められるところ。
先輩看護師が忙しくイライラしていて話しかけにくいことはあるかもしれないけれど、そこは思いきってソウダンしないと事故につながることもあるんだよ。」
などと具体例を交えて考えてもらうことではじめて、研修の学びが現場で活きる知恵になっていきます。
医療機関にとって新人研修は大きな投資です。わずか1時間の講演であったとしても、参加者が100人いたとすれば、そこには100時間ものリソースが投入されているわけです。人材育成にかける資金も時間も不足している医療機関であるからこそ、より「効果的」な研修になるように知恵を絞るべきではないかなと思います。
新人研修における講師選定のポイント
具体的な提言としては、「講師は学習の『谷』にきちんと『橋』をかけてくれる人を選ぼうよ」ということです。
まず、もちろん講師としての「伝える力」は重要です。「一般論」を示すだけではなく、それがきちんと「日常業務でどのように活用するか?」という生きた知恵に変換するためのファシリテーションが出来ているかどうかが見極めるポイントです。
講演スタイルであっても、「もしこんなことが起きたらどうしますか?」などの問いかけがあり、受講者が「自分だったらどうするだろう?」と考える時間があり、その後に学習内容が具体例とともに示される、といったリズムがあると良いと思います。
プロフィールについても、「医療現場の経験があること」、「新人研修の経験があること」、この2つは押さえておきたいところです。
もちろん、医療業界の人間が具体例を伝えることだけが「橋」をかける方法ではありません。他業界の講師であっても、質問やグループワークなどを通じて活用イメージを描いてもらうことは可能です。ただ、そもそも現場を知らない新人を対象とした研修ではややハードルが高くなることは知っておいた方がよいかもしれません。
守屋文貴
-
Facebookで
シェア
-
Twitterで
シェア
-
記事が気に入ったら
ブックマーク!
-
記事が気に入ったら
いいね!
-
アクリート・ワークスをフォーローする