榊原記念病院 心臓血管外科 高梨秀一郎様 | 医療特化型の研修・組織開発ならアクリート・ワークス

クライアントの声

榊原記念病院 心臓血管外科 高梨秀一郎様

目線を変えることでまったく別の世界がある。

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守屋:今日は榊原記念病院高梨秀一郎先生にお話を伺います。榊原記念病院ハートチームではクロスラーニングと組み合わせた形でチームビルディング研修を実施しています。さっそくですが、実際に研修をする前に直面していた悩みはどんなものだったのでしょうか?

高梨(以下敬称略):14年前に新宿から移転する前の榊原記念病院というのは小さな組織で、本当にファミリアルな治療をやってきたんですね。リーダーがひと目見れば、すべて見渡せるような規模でした。ところが、府中に移ってきて組織が大きくなって、各部門をつなぎとめる接着剤のようなものが必要になってきました。接着剤が必要のなかった小規模組織のときにはまったく想像のつかなかった難しさを感じました。それで意識的にチームづくりをしていかなくては、このままではせっかく今まで作り上げてきた榊原記念病院の伝統すらも失ってしまうのではないかと危機感を持ったのが、クロスラーニングをスタートしたきっかけでした。そして、クロスラーニングには連携が鍵になりますから、先生にそのベースとなるチームビルディング研修をお願いしました。

※クロスラーニング:循環器外科、内科、看護師、臨床工学技士・・・など多職種が互いの手技を経験するなど専門領域をまたいで学びあうこと。

守屋:なるほど、人数が増えることによってマネジメントが求められるようになったということですね。それまでに、チームづくりのために実践されていたことはありましたか?

高梨:そうですね。手探りでやっていた時代がありました。僕はもともと自分が一番信頼して安心して手術できる環境というのは、よくコミュニケーションが取れた麻酔科医と、よくコミュニケーションできるME(臨床工学技士)、あとはもちろん手術を手伝う看護師、それが一番大事だと思っているので。医者はさほど大事じゃないと思っていたので(笑)。チームとしてまとまるためには、各専門職がお互いに少し踏み込んだ理解をする必要があるかと思って少しずつ取り組んでいました。

守屋:それがクロスラーニングという発想につながっていくのですね。

高梨:そうです。自分自身も人工心肺を操作する側に回ったり、器械出しをしたり、普段やらないことを経験してみると、「あれ、こんなこともあったんだな」とすごくフレッシュな気持ちというか。自分にも分からからないことがたくさんあるということが分かったですよね。それまではメンバーが、それぞれ何をやっているかというのは分かっているつもりでしたが、視線を変えてみるとまるっきり別の世界が広がっていた。

守屋:トレーニングを通じて視座を変えてみると、まったく違う世界が見えてきたということですね。これは非常に大事ですね。

高梨:そうですね。僕は乗馬をするのですが、馬ってけっこう高いんですね。そうすると世界がまるきり違う。モノが動くスピードも違えば、空気の密度も違う。世界が別物ですよね。夏に子どもを連れて、石垣島に行ってカヌーをするんです。そうするとね、カヌーは水面スレスレ。そうするとまた、ぜんぜん違う世界ですよね。出会う生き物も違うし、まったく違うルールがそこにはある。だから目線を変えることでまったく別の世界があるんだなと。

守屋:まったく医療にも同じことが言えますね。おもしろいですね。

高梨:人工心肺を操作するCEはこのへんからこうやって、まるっきり違うものを見ていますよね。だからそこを生かさない手はない。安全という観点でもそうですし、自分をモチベートしてくれる何かを与えてくれるかもしれない。こういう発想でクロスラーニングを実施しています。

榊原写真

守屋:クロストレーニングとの相乗効果を期待して実施したチームビルディング研修ですが、どんな印象を持ちましたか?

高梨:いい小説を読むと、自分自身を物語の中に投影して見ることができるじゃないですか。それはやはり書き手が、読者の立場になって書いているからだと思うんです。先生のトレーニングはまさにそんな感じかなと思いますね。読者の立場に立って小説を書くように、一般企業のチームビルディングの考え方をそのまま持ち込むのではなくて、医療現場にも受け入れやすいようにスッと落としこめるような、そんな研修だと思います。だから皆すごく楽しくやっていますよね。

守屋:医療現場に特化してやっているので、そのフィードバックはうれしいですね。ありがとうございます。ほかには何かありますか?

高梨:リーダーシップはリーダーだけのものではない、チームを目標に導く言葉や行動のようなものだということが印象的でしたね。もちろん上で統括する人はいるのでしょうが、上があんまり出過ぎると仕事が早く進まないし、でも上で見る人がいないと皆が見るものがあちこちにいっちゃうのでまたそれもうまくいかないし、ということで。リーダーとメンバー間に局在するリーダーシップのバランス。それを含めてリーダーが意識できるになるとすごくいいチームができるのかなというふうに思いましたね。

守屋:そういう意味では、やはりチームが機能するポイントはリーダーのあり方というのも大事ですね。リーダーがいかにメンバーをひとつの目標に向けて動機付けて、力を引き出していくか。

高梨:そうですね。なんかこう人に相談するときって、だいたい肯定してほしいから相談する。

守屋:たしかにそういう面はありますね。

高梨:逆にですね、やりたくないから相談する。やりたくないことの理由を正当化したいから。難しいリスクの高い症例があったら、「これはちょっとOpen Surgeryはしたくないよ、こんな危ないのは」ていうときに、色々な人に、「CT見るとダメでした」「エコーから判断しても難しいですよ」「これなかなか難しいですよ」とか意見を求めて。それで「そうだよな、そうだよな、じゃあやっぱり手術は難しいよな」っていうチーム医療がリスクを取らないことの言い訳になってしまう。

守屋:先生、そういうときはどうされますか?

高梨:そういうときはね。いったん話を打ち切りますね。それはそれで意見は聞きますが。そして、患者さんに責任を持てる、実はその責任を持てるというのは、患者さんを送ってくれた内科医と話をします。その内科医にどのような形にして患者さんをお返しするかというのが問題なわけです。昨今、ガイドラインがすごく言われていますけども、エビデンスベースのガイドラインに沿って、ガイドラインに間違いないような形にしてお返ししますよといったところで、その送ってくれた内科医の物差しがまったく違っていれば、ダメなんですよね。それが地域医療だと思うんですよね。やっぱり地域医療は格差があるのは当たり前で、それぞれの実情に合わせてその患者さんが生きていく世界を考えた上で患者さんをお返しするというのが大事だと思うんですよ。それをガイドラインで一律化して、ガイドラインに沿っていない判断を迫られたときに、何かあったときには誰にも訴えられる隙がないようにしているためのチーム医療になってしまってはつまらない。間違った使い方。言い訳のためのチーム、言い訳のためのディスカッションにならないようにしないと。

守屋:そうですね。リーダーがリスクを取る勇気も大事ですね。

高梨:だからチームでディスカッションして、新しいものを創造するということは、そのディスカッションを通じて自分の考えをコロッと変える勇気がないとできないですよね。今までしてきたもの、自分がやってきたものを未練たらしく持っているのではなくて。

守屋:たしかに。チームは相乗効果が本質だと思うんですよね。人と人とが話し合うことによって自分1人では思いつかなかったようなアイデアが創造されるというところが。

高梨:なるほど、相乗効果ね。

守屋:それが、チームというと単なる役割分担になってしまうともったいないですよね。本当のチームの価値がちょっとしたコミュニケーションで引き出せるのに。

高梨:そのためには他職種をリスペクトできないとダメですよね。リスペクトするためには、その人がやっていることをよく知る。理解までいかないけれども、知るっていうね。知るためには興味を持たないとね。興味を持って知るということですよね。それでリスペクトが生まれる。そうすると何かが産まれてくると思うんです。なんかそれがね、やっぱり未成熟ですよね。ハートチームっていうのはね、毎回学会やシンポジウムのテーマに挙げられれるけれども、まだまだですよね。

守屋:権威の勾配が強いこともあるかもしれませんね。外科医に対して率直にモノを言いにくかったりとか、そういうコンテキストがチームビルディングの阻害要因にはなりますよね。

高梨:あるでしょうね。

守屋:医療チームにはフレーミングが大事だと思います。フレーミングというのはどういう枠組みでチーム活動をさせるかという、前提やルールみたいなものですかね。東京ハートラボには、「アホかと言わない、思わない」というルールがあるということですが、すごくいいですよね。あれによって権威勾配が緩みますし、お互いから謙虚に学ぼうという姿勢に自然になると思います。

高梨:そうですよね。

守屋:少し話を戻しますと(笑)、他に研修を通じてチームに起きた変化があれば教えてください。

高梨:チームビルディング研修だけではなくて、クロスラーニング全体の成果として、さっき言ったようなことを言ってくれるようになってきましたよね。今までちょっとムリして予定を入れていたようなことは、「これはあなたの立場に立つとしょうがないんだね」とかね。ちょっと踏み込んで理解できるようになったみたいなことを言ってくれますよね。

守屋:お互いの背景を想像して関わるようなコミュニケーションが。

高梨:そういうことなんでしょうね。チームとしての意識も出てきているんじゃないでしょうかね。自分が(チームを)作り上げていくというね。

守屋:高梨先生ご自身はどういう点で生かしていますか?

高梨:そうですね。僕自身もやっぱり振り返る機会になりましたよね。自分がやれていると思ったことがやれていないことを確認できた。チームづくりに対して。どういうふうにメンバーから自分が映っていたかというのが、少し客観的にこのことを通して見えるようになった。

守屋:例えば、目的と目標の違いについては重点的にお伝えしました。目的というのはけっこう抽象的なもので大事なのですけど、それだけではチームはまとまらない。目的と連動した目標、具体的な数値とか定量化できるものがあってはじめてチームのストラクチャーができて、協働の意識が生まれるということをお伝えしたつもりです。

高梨:そうですよね。榊原記念病院が小さいところからポンと大きくなって、組織が大きくなったときにとまどっているような。

守屋:役割分担してできていたものもだんだん境目がなくなってきているような。内科と外科の境目もだんだんなくなってきているような感じはありますよね。そういう中で、目的や目標を理解して共有していかないと、チームとしてはぶれてくる。

高梨:ハイブリッド。TAVI(経カテーテル大動脈弁植込術)もそうですよね。外科医の役割って何だ?、外科って何なんだ?外科というのは切って縫うのが外科か。そうじゃなくてストラクチャーを理解しているのが外科なのか。そういう意味で切る・切らないというのが、内科・外科の境ではなくなってきている。

守屋:たしかに。自分の役割の再定義みたいなものをやっていかなければいけないフェーズなのかもしれないですね。外科とは何なのか、という問いが大事なのかもしれませんね。

高梨:そうですね。何をしなければならないのかっていうのを、組織の中、自分のフィールドの中で定義していく必要があるのかもしれないですね。

守屋:それこそ目的ですね。何のためにという。

高梨:まるで第一次産業が出発点だった企業が、組織として生き延びていくために、プロダクトがまるっきり変わったものになっていくということもありますよね。医者なんかもそうなのかもしれないですよね。

守屋:多くの医療従事者が変化を感じているとは思うんですけど、もう少しそうした根本を言語化していく必要性は感じます。

守屋:大変面白い対話になりました。有難うございました。それでは最後に、わざわざ外部講師を呼んでチームビルディング研修をするメリットがあるとすればどんなことか教えていただいてもよろしいでしょうか。

高梨:チームビルディングについては、内部の人間だと、それぞれの利害関係がすでにあるわけで。ですから、チームの研修というのは内部の人がやるようなものではないと思いますよね。外部の方だからこそできるんじゃないですかね。

守屋:ありがとうございます。あとは、アクリート・ワークスが医療機関に特化しているということと、講師が医師であるということで感じたメリットはありますか?

高梨:そうですね。医療機関は多くの専門職が集まっている組織ですから、それを意識したトレーニングが必要になると思います。また、これは医療従事者の中の共通認識だと思いますけれども、医療従事者というのは、どんな職種、事務方も含めて、患者さんのためにということは思いますよね。それはお題目ではなくて、本当に掛け値なしに皆思うんですよね。そこの共通意識がない人は、ちょっとということがありますよね。病院としてはもちろん利益は大事ですけれども、ただその先にはやっぱり患者さんがあるわけで、そこを言うと皆スッと降りてくる、納得できますよね。そこをまず共有できるのはありがたいですよね。

守屋:たしかに、そこは一般企業とは違う文化ですよね。

高梨:そしてこうした研修は、今、必要なことだと思いますよね。未成熟のチームに意味づけをしていく。それが本当に医者の中でもね、内科とか外科とかそういうものの区分をなくす次の尺度と言いますかね。なくなったあとの次の尺度、自分の役割というのを作っていくうえでも大事なことなんですよね。すごく責任重大ですよ、先生(笑)。

守屋:有難うございます。でも、楽しいです。逆に私は臨床はもうぜんぜんダメなので。これしかできないんですけど。

高梨:いやいや、それこそ求められる中でできてきた先生のそのフィールドですよね。

守屋:ありがとうございます。まだまだ私たちも手探りなのですが、医療のために、そしてその先にある患者さんのために、ということを忘れずに良い仕事をしていきたいと思います。本日は有難うございました。

 

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